Urban Blueberry's Life

都内のマンションのバルコニーで楽しんでいるブルーベリー栽培のブログです

養液栽培にチャレンジ~準備編

既にブルーベリー農園等の商用栽培では、利用されつつあり、以前から気になっていたブルーベリーの溶液栽培。栽培場所にしているマンションのルーフバルコニーの大規模修繕をきっかけに、昨年春から小規模な養液栽培にトライしてみました。1年間の養液栽培をとおして、解ったことや苦労したことについて書きたいと思います。
まずは、準備編から。

溶液栽培に期待したこと

①土壌劣化による植替の手間が省ける

かつては、100鉢以上のブルベリーを計32m²程度のルーフバルコニーで栽培していましたが、大規模修繕をきっかけに整理し、3割以上減らしました。ただやはり、毎春植替えの手間に煩わされており、かなりの負担になっていました。数年前からピートモスに替えてココヤシベースの用土を多用するようになりましたが、やはり3年くらい使用すると泥土化していきます、ラビット・アイ系については、あまり土を選ばないので、少々泥土化した土でも問題なく育ててることができますが、ハイブッシュ系のブルーベリーは、泥土化により水はけが悪くなると、成長に影響が出始めるようです。また、ミミズが入り込むと、更に泥土化を早めてしまいます。

ブルーベリーの溶液栽培では主に、アクアフォームという吸収性と通気性に優れたフェノール樹脂を原料としたウレタンファームが使用されますが、長年使用しても構造が変わらない為、植物の溶液栽培に使用した場合、10年以上植替えが不要といわれています。また、乾燥状態では、土に比べて遥かに軽いことも、大きなメリットになります。安全性についても保証されています。

②清潔な状態が保たれる

分解しやすい土と異なり、長い間清潔性が保たれるため、虫の発生等を極力抑えられることが期待できます。ただブルーベリーにとって最大の害虫であるコガネ虫の幼虫に対しては、防御効果があるかは不明です。当然ながら、雑草に関しては、土と同じように繁殖するかと思います。

③早い成長が期待できる

これも大きな理由です。Webで色々と探してみると溶液栽培している植物の成長が早いという情報が多数見られます。土壌栽培でも適切な肥料を与えることで、成長は見込めますが、その適切な栄養分を与え続けるのは結構難しいと思います。溶液栽培では、常に最適な養分量を植物に提供し続ける為、きわめて効率良く育てることが期待できます。

溶液栽培のデメリット

コストがかかる

溶液を含んだ水を毎日手動で与えられるのであれば、それほど大差はありませんが、これは、大きな手間になります。通常は、できるだけ自動で一定量の溶液を潅水する仕組みを取り入れることになりますが、これがそれなりにコストがかかります。
もともとブルーベリーの養液栽培は、農園等の大規模な栽培家向けに普及し始めたもので、個人、ましては、ベランダやルーフバルコニーといった小規模な栽培をターゲットとしていないと思います。その為、養液も部材も業者向けの販売単位になっているものが多く、これらを趣味の個人栽培に使用しようとすると、1鉢あたりのコストが結構かかってしまいます。例えば、ブルーベリーの養液栽培でもよく使用される、イスラエルのネタフィム(Netafim)社製の点滴潅水用のホースですが、50mや100mでの販売単位になっており、1万円を超えます。10~20鉢程度の利用では無駄が多く発生してしまいます。

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目指した養液栽培

上記の養液栽培のメリットを生かして、まず、トライアルの意味を兼ねて10鉢くらいでスタートすることにしました。目指した養液栽培は、以下の条件のものです。

①極力コストを抑える

トライアル的なスタートなので、リスクも考え、1鉢あたりのコストが割高でもできるだけ初期投資を抑える。自作可能な部材は、極力自作する。

②極力自動化する

養液の希釈や点滴潅水は極力自動化を前提とする

③省スペースであること

マンションのルーフバルコニーなので大きなタンクや容器は使用できません。できるだけスペースをとらないシステムにすること

使用した部材について

上記の要件に沿った部材を揃えようと思いましたが、やはり必要な少量の入手が難しいことがわかりました。そこで、Webを検索すると(株)アンマズハウスさんというところから「かんたんキット」なるものが販売されていました。
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ブルーベリーにかける情熱と夢 小さい規模で生産

実際にこのキットを使用されていると思われる方のブログもありました。
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ブルーベリー養液栽培かんたんキットの施工作業 | BLUEBERRY BASE MOKA

早速アクセスしたところ、すぐに返信がありました。鉢数に応じて部材を分けてもらえるようですが、養液はそこそこ大容量のものを購入、大きなポリバケツが必要といいものだったので、必要なものだけの切り売りをお願いしようとしましたが、残念ながら、途中で返信が無くなり、ここでの購入は、断念しました。
チューブ類の切り売りや栽培アドバイス付き?のようなので、コストや面倒な部材調達を避けたい方は、コンタクトしてみると良いか思います。

結局、必要な部材なすべて個別に調達することになりました。
↓当初想定した溶液栽培の全体イメージです。

バスポンプを使用した点滴潅水システムの部分は、上述のプログに詳細に紹介されているので省略しますが、もともとのシステムでは養液を希釈して90Lのタンクに貯めておき、バスポンプを使って潅水する方式でしたが、大きなポリタンクをバルコニーに置くスペースは無いので、10Lほどの小型のポリタンクに自動的に希釈した養液を連続的に貯められるような方式を検討しました。

一定濃度の希釈液肥をつくる為のツールですが、調べると次の以下の3つの商品にたどり着きました。

(左)比例式液肥混入器は、水流によって内部のピストンが動作し、水流に応じて一定の希釈濃度になるように液肥を吸い上げるもので、ドサトロンという商品が有名です。ただ、これはプロ向けの商品で、安いものでも8万円以上と高価で、小規模のガーデニング養液栽培には向きません。Amazonをみるとコピー商品も出回っているようですが、信頼性には不安があるようです。

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(中)FPS液肥混入器は、ベンチュリー方式という、出口の水流を絞ることで負圧を発生させ、下部から一升瓶やペットボトルに入った液肥を吸い上げて、一定濃度になるように液肥を混入するというものです。ドサトロンに比べると安価(1万円以下)ですが、ある程度水流(水圧)がないと、うまく動作しないようです。

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(右)今回採用したのは、ガーデニング用品で有名なタカギが販売している「かんたん液肥希釈キット」という商品です。

もともと肥料で有名なハイポネックス社との共同開発商品のようで、ハイポネックスの原液をセット使用するのが前提となっていますが、ハイポネックスの原液は使用しません。ブルーベリー栽培の養液としては問題ないかと思いますが、ブルーベリー栽培では酸度をあげる(=pH値を下げる)必要があります。これを満たすために、養液はブルーベリー栽培向けにブレンドしました。この商品には、ハイポネックス原液ではなく希釈用の液肥ブレンドするための希釈用空ボトルをセットで販売している商品もあります(2023年3月現在メーカの公式ショップでは在庫は無いようですが、いくつかの通販ショップで販売されています)

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結構高いので、上記の公式HPで購入しハイポネックス液肥のボトルを利用して目盛りを付けた方が良いかと思います。
タカギのガーデニング用品は、殆どのホームセンターで入手可能ですが、この商品だけは、店舗では見かけませんでした。通販専用と思っても良いかもしれません。

このかんたん液肥希釈セットの散水用シャワーノズルに替えて点滴潅水用のPEパイプを接続すれば良いと考えたのですが、実はその方法では上手くいかないことが判りました。この商品も前述のFPS液肥混入器と同様、水流の入口と出口(散水用シャワーノズル側)の水圧差(負圧)で液肥を吸い上げる仕組みのようで、出口を別なものに替えてしまうとうまく水圧差が得られず、正しく動作しないようです。

そこで、散水用シャワーノズルはそのままにして、一旦、希釈した養液をポリタンクに貯めて、それをタイマーと組み合わせたバスポンプで設定した時刻に潅水用PEパイプに養液を送り込む仕組みにしました。

ポリタンクは、限られたスペースに置けるような10Lほどの小さいものです。当然ながら、すぐに養液はなくなるので、自動的に養液を補充する仕組みが必要になりますが、この自動化を水位センサーと電磁弁を組み合わせて実現しました。

この水位センサーを利用して自動的に養液を送り出す仕組みは、以下のブログを参考にさせていただきました。

↓↓↓

【真似するだけ】水耕栽培の水やり・液肥を自動で投入する方法 [簡易自動化] - 悠々自適生活研究所

必要なものは、水位センサー、ACアダプター、電磁水栓弁と配線材のみで、いずれも1000円以下でAmazon等で入手できます。

肝心な養液ですが、窒素・リン酸・カリウムは配合した有機液肥と微量要素肥料を水にとかしたもの、さらに、pH調整(ダウン)剤を1000倍程度に希釈し、最終的に、pH値が4~5.5程度、EC値(導電率・肥料濃度の測定値として使用される)が、300μs/cmくらいになるように調整しています。ブルーベリー栽培に使う有機液肥は、ある程度リン酸の比率が高いものを選んだ方が良いかと思います。

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養液栽培用微量要素 PB−3(Fe・Mn・B・Cu・Zn・Mo)995グラム入

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PH計とEC計は、養液栽培で必須です。

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鉢は、大型の果樹用鉢が一般的に使用されるようですが、11号(40cm)のスリット鉢が余っていたので使用しています。用土は、前述のアクアフォームを100L×2使用しました。

養液栽培をスタート

最初のスタートに選んだ苗木は以下のとおりです。

ユーリカ(サザンハイブッシュ) 3年生 2鉢 
OPI(サザンハイブッシュ) 3年生 2鉢
ファージング(サザンハイブッシュ) 3年生 2鉢
スプリングハイ(サザンハイブッシュ) 2年生 2鉢
ヌイ(ノーザンハイブッシュ) 2年生? 1鉢

ユーリカ、OPIファージングは、大関ナーセリーから、スプリングハイは、オーシャン貿易、ヌイは、ホームセンター(カインズ)で入手したものです。ユーリカ、OPI、スプリングハイは、比較のため、同時に購入した1鉢を通常の土壌栽培(ココファイバー使用)を行いました。
OPIのみ初めての栽培で、他は、いずれも土壌での栽培経験がある品種です。

入手した、苗木の根から極力土を取り除き、アクアフォームへ植替えを行いました。
水分を含まないアクアフォームは、ちょっとした風で、飛散してしまいます。植替えは完全に無風な状値で行う必要があるようです。

養液栽培をスタートししばらくは問題なく、成長も順調に見えましたが....

(実践編に続く)